小さな家族のために知っておきたい植物の毒性/屋外樹木

  • このサイトでは主に犬と猫に対する毒性について述べています。そのほかの動物種に関しましては各専門家へお尋ねください。
  • 樹木類は本来犬猫にとって食品ではないため、少量口にしても問題が起こりにくいという視点で記載しています。多量に食べた際の健康面への影響や、個別のアレルギーに関しましては獣医師等へご相談ください。万一、飼育動物への健康被害が起こった場合には一切の責任を負いません。
  • 可能な限り危険な植物は回避を。

観葉植物と呼ばれるものの多くは寒さに弱いため屋内管理になりますが、小さなパートナーが植物に触れる機会は、屋内でとは限りません。
庭や公園、おさんぽコースで、普段取り立てて意識をしたことのない植物にも安全なものと、そうでないものが存在します。

今回のコラムでは〝知っておきたい植物の毒性シリーズ〟庭木 街路樹編として、主に屋外でよく目にする樹木について解説します。

パブリックな場にも危険がいっぱい

まずは避けるべき樹木を、出会いやすいシーンごとにまとめて紹介します。
樹皮、葉、花、果実、またその全てなど毒性をもつ部位は様々ですが、特に果実は毒性が高いものが多く、地面に落ちていることもあるので注意が必要です。

乾いて落ちたセンダンの実。ムクドリなどの野鳥が食べますが、毒性があります。

街路樹や公園、寺社など公共エリアで多くみられるもの

  • ネズミモチ(モクセイ科)
    胃腸障害、協調運動障害、心拍増加、まれに死亡に至る
  • イチョウ(イチョウ科)
    嘔吐、痙攣、呼吸困難、接触性皮膚炎、結膜炎など
  • トチノキ(トチノキ科)※マロニエも含む
    重度の嘔吐と下痢、抑うつまたは興奮、瞳孔散大、昏睡、痙攣など
  • ニセアカシア / ハリエンジュ(マメ科)
    嘔吐、抑うつ、食欲不振、衰弱、呼吸困難、下痢下血、死亡に至る
  • センダン(センダン科)
    下痢、嘔吐、よだれ、抑うつ、発作など
  • ハナミズキ(ミズキ科)
    口腔内の炎症、皮膚炎など
  • ツツジ(ツツジ科)
    嘔吐、下痢、脱力感、心不全など
  • アジサイ(アジサイ科)
    嘔吐、抑うつ、下痢など シアン化合中毒はまれで、通常は胃腸障害を引き起こす
  • キョウチクトウ(キョウチクトウ科)
    よだれ、腹痛、下痢、疝痛、うつ病、死亡に至る
  • シキミ(マツブサ科)
    よだれ過多、嘔吐、血圧上昇、呼吸困難、痙攣、死亡に至る
ホオノキとよく似た大きな葉をもつトチノキ。実はとち餅でもおなじみですが、毒性だけでなく気管を詰まらせることがあり、気をつけたい樹木。花も実も紅葉も美しく、街路樹として植えられることの多いハナミズキ。よく似た花をつけるヤマボウシと、見分けるポイントは花弁の形。公園や寺社から個人庭まで、幅広い場所に植えられるアジサイは、枝葉が低い位置にあるため、誤食に注意したい植物です。全株で非常に強い毒性をもつキョウチクトウは、排気ガスなど環境汚染物質にも強いことから、公共の場でよく見られます。

昔ながらの和風の庭に見られるもの

  • ソテツ(ソテツ科)
    嘔吐(吐血を含む)、黄疸、喉の渇き、血便、あざ、肝不全、死亡に至る
  • イチイ(イチイ科)
    ふるえ、呼吸困難、嘔吐、発作(犬)、急性心不全による死亡に至る
  • ツゲ(バクサ科)
    嘔吐、下痢など
  • イヌマキ(マキ科)
    嘔吐、下痢など
  • ユズリハ(ユズリハ科)
    下痢、嘔吐、腹痛、肝障害、黄疸、麻痺、死亡に至る
  • ピラカンサ / トキワサンザシ(バラ科)
    粘膜の炎症、瞳孔散大、呼吸困難、あえぎ、ショックなどを起こす
  • マサキ(ニシキギ科)
    嘔吐、下痢、手足の腫れ、麻痺など
  • ニシキギ(ニシキギ科)
    嘔吐、下痢、腹痛、衰弱、大量に摂取した場合心拍異常など
  • ロウバイ(ロウバイ科)
    痙攣、血圧上昇な
  • コブシ、モクレン(ともにモクレン科)
    筋肉弛緩、麻痺など
  • ヤツデ(ウコギ科)
    下痢、嘔吐、溶血など
    ASPCAのリストでは無毒とされているが、ヤツデサポニンを含むため注意が必要
  • アセビ(ツツジ科)
    嘔吐、下痢、脱力感、心不全など
  • ナンテン(メギ科)
    脱力感、協調運動障害、発作、昏睡、呼吸不全、まれに死亡に至る
  • クチナシ(アカネ科)
    軽度の嘔吐及び下痢、蕁麻疹など
  • ボタン(ボタン科)
    嘔吐、下痢、うつ病など
  • シャクナゲ(ツツジ科)
    嘔吐、下痢、唾液過多、昏睡、低血圧、中枢神経系の抑制、心血管虚脱及び死亡に至る
  • ジンチョウゲ(ジンチョウゲ科)
    皮膚炎、口内炎、胃炎など
  • ニオイバンマツリ(ナス科)
    ふるえ、発作、下痢、嘔吐、唾液過多、無気力、協調運動障害、咳など
  • フジ(マメ科)
    嘔吐(吐血を含む)、下痢、うつ病など
室町時代から庭園に植えられてきたソテツ。最近では小さな鉢物でも出回っているため、観葉植物としても注意が必要です。ツゲやキャラボクなどと並び、丸く刈り込まれた姿をよく見かけるイチイ。やわらかな見た目に反し、全草に毒があり危険。冬に鮮やかな赤い実をたわわにつけるピラカンサは、毒性だけでなく、枝に鋭い棘があるため、安易に触れることも避けたい植物。縁起物とされ、正月料理に添えられることもあるナンテンは、じつは毒性のある植物。彩りとして目でたのしみ、口にしないこと。

洋風の住宅外構に植えられることが多いもの

  • コルジリネ(キジカクシ科)
    嘔吐(吐血を含む)、うつ病、食欲不振、唾液過多、瞳孔散大(猫)など
  • ユーカリ(フトモモ科)
    よだれ、嘔吐、下痢、抑うつ、衰弱など
  • 月桂樹 / ローリエ(クスノキ科)
    嘔吐、下痢など
  • イボタノキ / シルバープリベットなど(モクセイ科)
    よだれ、腹痛、下痢、疝痛、うつなど
  • ランタナ(クマツヅラ科)
    嘔吐、下痢、呼吸困難、衰弱、肝不全など
  • ジューンベリー(バラ科)
    よだれ、呼吸困難、心血管虚脱、死に至る
  • セイヨウニンジンボク(シソ科)
    吐き気、めまい、皮膚炎など ※成分は不明
  • エゴノキ(エゴノキ科)
    口腔内と喉の炎症、胃のただれ、溶血など
  • ノウゼンカズラ(ノウゼンカズラ科)
    皮膚炎、瞳孔散大など
  • エニシダ(マメ科)
    吐き気、嘔吐、めまい、頭痛、腹痛、下痢、胃腸痙攣、血圧降下、中枢神経の麻痺など
  • デュランタ(クマツヅラ科)
    下痢、嘔吐、胃や腸からの出血、筋力低下、眠気など
  • エンジェルトランペット / チョウセンアサガオ(ナス科)
    口腔内の渇き、目のかすみ、瞳孔散大、嘔吐、痙攣、呼吸困難、幻覚など 
ドライガーデンなどに大型の多肉やサボテン類と混植されることの多いコルジリネ。ユッカやドラセナと共に、サポニンをもつキジカクシ科の仲間です。シルバーがかった葉や、ボタンのような実が花材としても人気のユーカリも、コアラのように特殊な消化機能を持たない動物にはおすすめできません。やわらかな枝ぶりと白い斑が明るい雰囲気のシルバープリベット。マンションなどの外構にも多く使われますが、避けた方が良い植物のひとつ。砕いた実は石鹸の代わりとなるほどのサポニンをもつ、エゴノキ。虫こぶは、猫の足に似ることから「エゴノネコアシフシ」と呼ばれます。

そのほか 果実の収穫を目的に植えられるもの

未熟な果実や、種子が萎凋する過程で毒性をもつ
  • サクランボ(バラ科)
  • 杏(バラ科)
  • りんご(バラ科)
  • スモモ(バラ科)
  • 梅(バラ科)
  • モモ(バラ科)
    粘膜の炎症、瞳孔散大、呼吸困難、あえぎ、ショックなどを起こす
  • ビワ(バラ科)
    嘔吐、脱力感、昏迷、痙攣、呼吸困難など
エッシェンシャルオイルに毒性が含まれる
  • オレンジ(ミカン科)
  • グレープフルーツ(ミカン科)
  • レモン(ミカン科)
  • ライム(ミカン科)
    嘔吐、下痢、抑うつ、皮膚炎など
ドライフルーツを含む全株で有毒
  • ブドウ(ブドウ科)
    嘔吐、食欲不振、下痢、大量に摂取した場合腎臓障害、死に至る
 樹皮や根に毒性を保つ
  • ザクロ(ミソハギ科)
    嘔吐、下痢、胃炎、めまい、運動失調、精神混乱、湿疹、中枢神経麻痺など
バラ科の果実は、未熟な種子に酵素と結びつくことで毒性を発揮する物質(青酸配糖体)を持ちます。これは、実が熟す前に動物に食べられないようにするため、と言われています。柑橘系の果樹は、果実だけでなく、油点と呼ばれるエッセンシャルオイルをもつ細胞が葉などにも含まれます。また、枝には鋭く大きな棘もあるため、触れることも注意が必要です。

 馴染みのある名前が多く、毒性のある植物は意外と身近にあることがわかります。中には野鳥が好んで食べているものもありますが、鳥が食べられるのだから大丈夫ということはなく、家族の動物種に合わせて正しく認識する必要があります。

しかし、これでは庭に木の一本も植えられないということになりかねません。毒性の面で問題ないとされる樹木はあるのでしょうか。

日本庭園の定番から人気のオージープランツまで

こちらもよく聞く名前がラインナップされているのでご安心を。

昔から日本の庭でよく見られるもの

  • ツバキ(ツバキ科)
  • サルスベリ(ミソハギ科)
  • マツ(マツ科)
  • ヒメウツギ(アジサイ科)
  • レンギョウ(モクセイ科)
  • サンザシ(バラ科)
  • ムクゲ(アオイ科)
  • ヒイラギメギ / マホニア(メギ科)
  • シュロ(ヤシ科)
  • トベラ(トベラ科)
  • サンキライ(サルトリイバラ科)※棘に注意

香りや花もたのしめて、洋風の外構に合うもの

  • バラ(バラ科)※棘に注意
  • ローズマリー(シソ科)
  • グミ(グミ科)
  • イクソラ コッキネア / サンタンカ(アカネ科)

最近人気のオージープランツ

  • ピンクッション(ヤマモガシ科)
  • ブラシノキ / カリステモン(フトモモ科)

そのほか、積極的に庭に植える人は少ないかもしれませんが竹も毒性はありません。しかし地下茎でどんどん増えてしまうため、竹や笹の雰囲気が好きな方にはバンブーがおすすめです。

ナンテンに似た姿をしたマホニアは、洋風の庭にも和風の庭にも合い、明るい黄色の花や、青い実など見どころも多い植物。常緑のため、1年を通してグリーンがたのしめます。トロピカルな雰囲気がお好きな方には、シュロはいかがでしょうか。特徴的な繊維質の幹と切れ込みの深い大きな葉を持ち、昔から人の暮らしに役立ってきた樹木です。バラは毒性がないものの、やはり鋭い棘は小さなパートナーにとってネック。モッコウバラであれば棘はなく生育旺盛、花に淡い芳香もあります。オージープランツとして人気のブラシノキ。名前の通りのユニークな花をつけるほか、シルバーがかった細葉がやわらかな雰囲気で、乾燥に強く丈夫です。

 

公共の場は毒性の有無に関わらず、排気ガスや塩害といった環境耐性や、成長速度などの維持管理性で合理的に植栽されています。そのため、パートナーである人間が正しく知り、たのしくアウトドアタイムを過ごせるようリードしたいもの。

ぜひ花卉 ハーブ編もご覧になって、風景になりがちな屋外の植物に改めて目を向けていただければと思います。

参考:

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